国産の蚕「太平長安」を使った養蚕支援事業「Reborn The Silkプロジェクト」。
2023年、創業40周年記念事業として、約1年間にわたって蚕の飼育から製糸、製織、染色等を経て反物を作り、きものに仕立てるまでの取り組みを行います。
日本の養蚕業の伝統技術や文化の継承のために
かつて日本では富岡製糸工場の繁栄をはじめ生糸の生産が盛んでしたが、近年は減少の一途をたどり、ほとんどを輸入品に頼っているのが現状です。
生糸は日本の伝統文化であるきものや帯に欠かせない原材料であり、養蚕は明治時代の文明開化を大きく推進させた世界に誇る一大産業です。
大切な伝統技術や文化の継承のために、国内の養蚕業を支援する一助になればという想いから「Reborn The Silkプロジェクト」を立ち上げることになりました。
プロジェクト始動
2023年5月からプロジェクトは本格始動します。
まずは蚕糸科学技術研究所で維持保存されていた「太平長安」という品種の蚕の卵を孵化させます。その数、なんと4万頭。
これらの蚕たちがやがて繭になり、どれだけの生糸を作り出し、どのようなきものに仕立て上がるのか、プロジェクトの進行にともない定期的にお知らせする予定です。
【太平長安】
富岡製糸場全盛期の名蚕品種。
現在は卵が維持保存されているのみで、幻の蚕が紡ぎ出す生糸には上品な光沢感があり、ハリと軽さを併せ持つ美しい生地になるといわれています。
6月から蚕の飼育が開始
卵から孵化した希少品種の蚕「太平長安」を育ててくださるのは、長野県駒ヶ根市の竹内慶子さん。
もともと竹内さんの専門分野は工芸でしたが、ご先祖が養蚕や製糸業に携わっていたことを知り興味を持ち、養蚕の道へ。
養蚕の楽しみは「養蚕を知らない子供たちに、日本の大切な文化を伝えていけたら嬉しいですね。」と答えてくださいました。
卒業生が見学に
6月下旬、長野県駒ヶ根市を卒業生3名が訪ねました。 事前に「そろそろ上蔟が見られるかもしれませんよ」と伺っていましたが、目論見通りにはいかず。それでも、4万頭の蚕たちの様子を見学し、竹内さんから貴重なお話をたくさん伺うことができました。 当日は地元新聞社も取材に駆けつけ「幻の蚕ときものファンの逢瀬」は翌日の新聞に大きく取り上げられました。
→ 詳しい記事はこちら7月、宮坂製糸所で生糸作り
「宮坂製糸所」は、煮繭で機械を用いず、手で挽き出して糸を繰る「手挽き」を行っている、日本で唯一の製糸所。
社長の道面も手挽きにチャレンジ。「難しい!」と悪戦苦闘しながら、なんとか成功しました。
ブランド名は「Arcsilk(アルクシルク)」に決定
9月からは京都丹後にて白生地の製織に入りました。
2024年のきものや帯の完成に先駆けて10月には「ブランド名」を募集。
1,340件もの応募をいただき、厳正なる審査の結果、「Arcsilk(アルクシルク)※」に決定しました。
※商標登録出願中
ARC(アルク)はフランス語で「架け橋」を意味します。このブランドが、日本文化のきものを未来へつなぐ「架け橋」となるように、またきもの姿で「歩く」人たちがもっともっと増えるように、という思いが込められています。
【スケジュール(予定)】
2023年5月 維持保存されていた4万頭の蚕の卵を孵化
2023年6月 長野県の養蚕農家で養蚕開始
2023年7月 日本で唯一「手挽き」を行う長野県の宮坂製糸所で生糸作り
2023年8月 生糸を使って京都丹後で白生地を製織
2023年12月 白生地を染めて反物に
2024年2月頃 きものに仕立て上がり