ひとたびは花は散り、草木は枯れるものですが、時が来ればまた花は咲き、草木は茂ります。美しいばかりでなく、粘り強い生命力を表す文様です。
桜文[さくらもん]
日本の国花といわれますが、文様として表現されるようになったのは平安時代の頃だとか。小桜の小紋は、元禄時代の武士が、小袖の柄として用いたものが現存します。今では、写実的な桜でなければ、春に限らず桜文を着るようになっています。
橘文[たちばなもん]
橘は古くは柑橘類の代表であり「ときじくのかくのこのみ(非時香菓…夏に実り、秋冬も香りの良い木の実)」といわれ、かぐわしいものとされてきました。文様の格調の高さと、縁起の良さがことに求められる留袖や振袖にもよく用いられます。
菊文[きくもん]
写真は菊文の一種である「古代菊」です。中国の周の時代の美少年、菊慈童(きくじどう)が、菊の露を飲んで不老不死になったという故事があり、健康と長寿を願う意味もある文様です。
若松文[わかまつもん]
芽生えてあまり日数のたっていない、若い松の文様です。色濃いままで冬を越す松を「忍耐と節操の象徴」ととらえる考え方は中国から伝わったものですが、若々しさの中にも、毅然とした表情のある若松文は、留袖や振袖、袋帯などに用いられます。
梅鉢[うめばち]
梅の花の中心の「しべ」が大きく放射状になっている文様が梅鉢です。大宰府天満宮の紋は「梅花」ですが、梅鉢と梅花は、菅原道真ゆかりの紋でもあります。梅鉢は、天神様とも浅からぬ縁のある文様のようです。 (写真は梅鉢唐草)