養蚕支援事業「Reborn The Silk プロジェクト」、この6月からいよいよ蚕の飼育が開始されました。
緑一面に茂った桑園。1頭の蚕が20枚程度の桑の葉を食べるそう。(6月上旬撮影)
卵から孵化した希少品種の蚕「太平長安」を育ててくださるのは、長野県駒ヶ根市の竹内慶子さん。
もともと竹内さんの専門分野は工芸でしたが、ご先祖が大正から昭和にかけて養蚕や製糸業に携わっていたことを知り、養蚕に興味を持ったといいます。博物館で10年間、学芸員として養蚕に関する仕事などをした後、2年前に地元で最後の養蚕農家が廃業したのをきっかけに養蚕の道へ。
「古い農家さんを引き継いだので道具なども壊れている状態で、マイナスからの出発となり本当に大変でした」と話す竹内さんに、養蚕の楽しみを伺いました。
「養蚕を知らない子供たちに、日本の大切な文化を伝えていけたら嬉しいですね。現場で子供たちに喜んでもらったり、授業の一環として展開していただいたり、そうしたお手伝いができるのが楽しいです」
今回の「Reborn The Silk プロジェクト」についても尋ねました。
「現在、日本で使われている国産の絹糸は全体の1%に満たないと言われています。きものファンの方に、このプロジェクトを通して貴重な絹糸を使っていることや、商品に至るまでの過程も楽しんでいただき、きものへの造詣をもっと深めていただけたら嬉しいですね」
竹内さんのもとで元気に育っている蚕から生糸づくりが始まるのは7月の予定です。
引き続きプロジェクトの進行をお知らせしてまいりますのでお楽しみに。
今回のプロジェクトのために用意された新しいハウス。
太平長安、三齢起蚕の桑付けの様子。ここから約3週間で繭を作り始めます。
養蚕を営む竹内慶子さんは元学芸員。新芽を待つ桑園で(3月撮影)
【竹内 慶子さん プロフィール】
長野県生まれ。東北芸術工科大学・大学院で漆芸素材の基礎的な研究に取り組み、旧財団法人木曽地域地場産業振興センターで学芸員などを経験。2005年伊那美術展伊那市長賞受賞、伊那美術協会会員、日本文化財漆協会会員 他
【Reborn The Silk プロジェクト】
日本和装が約1年間にわたって蚕の飼育から製糸、製織、染色等を経て反物を作り、きものに仕立てるまでを行うプロジェクト。大切な伝統技術や文化の継承のために国内の養蚕業を支援する一助になればという想いで取り組んでいます。
【スケジュール(予定)】
2023年5月 維持保存されていた4万頭の蚕の卵を孵化
2023年6月 長野県の養蚕農家で養蚕開始
2023年7月 日本で唯一「手挽き」を行う長野県の宮坂製糸所で生糸作り
2023年8月 生糸を使って京都丹後で白生地を製織
2023年12月 白生地を染めて反物に
2024年2月頃 きものに仕立て上がり